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トランプと「ハレルヤ」:アーティストが政治キャンペーンでの楽曲の使用に反対しても阻止するのが難しい理由

Updated: Sep 8, 2020


先週の共和党大会の閉会時にレナード・コーエンの「ハレルヤ」が大音量でかけられた時、ドナルド・トランプのファンたちから歓声が鳴り響いた。しかし、それはコーエンのファンたちの怒りをかい、故人の財団に至っては法的措置も検討しているほどだ。


実はトランプ陣営は事前にコーエンの楽曲の使用を依頼していたが、コーエン財団はそれを断っていたと言う。それにも関わらず、キャンペーンは曲を使用したのだ。


「共和党大会が別の曲をリクエストしていたら、例えば「You Want it Darker」とか…それなら許可を検討したかもしれませんけれど」とコーエン財団の弁護人が皮肉まじりに声明で述べた。


しかしこのような論争は今に始まった話ではない。選挙のたびに、候補者が楽曲を無断で使用したと著作権に関する新しい見出しが続々と登場する。トランプの場合は数々のクレームがあり、ローリング・ストーンズからは「You Can’t Always Get What You Want」の使用に対して、故トム・ペティの「I Won’t Back Down」を使用した際には財団から強く批判された。2016年の対抗馬だったヒラリー・クリントンもビキニ・キルの「Rebel Girl」を無断で使用したとして問題になった。


最近では、ロッカーのニール・ヤングがトランプ陣営が無断で「Rocking in the Free World」をかけたことに対して訴訟を起こすという異例の対策をとった。


なぜ政治家たちは許可がないにも関わらず繰り返し楽曲を使用するのであろうか。特にアメリカにおいては主要政党がともに定期的に知的財産の保護を積極的に訴えているにも関わらずである。


その最もシンプルな回答が、実際に楽曲を使用することができるからという理由だ。アメリカの著作権法によると公なパフォーマンスという点においてはいわゆるブランケット・ライセンス制度が適用されている。つまり、楽曲を演奏したい側がASACAPまたはBMIの2つの著作権管理団体のいずれかのカタログにある楽曲の使用料を支払えばいいのだ。


さらに、司法省は何十年もの間両団体に対して、全ての依頼者に対して楽曲をライセンシングすることを法令で命じている。その命令は、過去に著作権管理団体がまるでカルテルかのように独断で楽曲を使用する権限を決めたり、ライセンスする側からお金を騙し取ったりすることを防ぐための対策であった。


ブランケット・ライセンスをすることの利点としては、カヴァー・バンドからジューク・ボックスのオペレーター、レストランまで幅広く公共の場所で誰もが容易に音楽をかけることができるようになったということ。しかし、今回のハレルヤの一件が示すように、作詞/作曲家がそのような意図での使用は間違っている、あるいは冒とくだと信じていたとしても、現実にはプロパガンダを目的にしていても楽曲を使用することが可能なのです。


近年においてはブランケット・ライセンス制度の中でもアーティストが政治集会において楽曲を使用することを除外する条項を組み込み始めている。またそのような使用の仕方は楽曲の価値を壊滅させ、いわゆる宣伝する権利を侵害していると主張するミュージシャンもいる。


しかし、このような法的主張は未検証であり、司法省がBMIやASCAPに対して政治集会の場合は例外として扱うことを許可するかどうかは確かではない。懐疑的な人たちは、会場がライセンスを取得すればそのイベントの目的が何であれ使用が許可されるのではと考えている。そのため、ニール・ヤングの著作権に関する訴訟が今後ミュージシャンが政治家に対して楽曲の使用を停止させることができるか否か、重要なテストケースとなるのだ。


皮肉にもアメリカは著作権を強く推奨する傾向にあるにも関わらず「著作者人格権」というシステムが欠けている。他の多くの国では一般的とされるこのシステムがあれば、ニール・ヤングやコーエン財団などの主張を裏付けたのではないかとマギル大学の法学部教授リチャード・ゴールドは話す。


知的財産を専門にするゴールド教授は、著作者人格権はアーティストが信じていない目的のために自身の作品を活用されることを防ぐことができると言う。そのシステムが存在しない場合、ミュージシャンが楽曲の使用を強いるのは、例えそれが誤った認識を生じさせる場合でも困難なのである。


「今回はまさにその実例ですね:トランプ陣営がコーエンの象徴的な曲を使用したことで、死後でもコーエンがトランプの大義を支持しているという(誤った)信念を導く可能性があるのです」とゴールド教授は述べた。


9/1/2020


Translation by © Sublingual Services 2020

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