彼らはコーチェラのステージを建てるはずだった。いま彼らはコロナウイルスのトリアージ・テントを建てている

Updated: Apr 9

https://www.latimes.com/entertainment-arts/music/story/2020-03-30/coronavirus-event-companies-coachella-pivot-covid-19-testing?fbclid=IwAR0PTk2ZJk3hEOcuOLjX_bKy4FT4SWlF3cOjRJZ6GjTO1zDkwWTcz2Bph8o



Los Angeles Times

3/30/2020

Translated by George Bodman


本来なら、ライアン・コウラは今年もサウス・バイ・サウスウェストやテニスのBNPパリバ・オープン・トーナメントやコーチェラ・フェスティバルの準備に忙殺される2週間を祝っているはずだった。

カリフォルニア州トーランスを拠点とする制作会社であるコウラ・イヴェンツの設立者で41歳のコウラは、南カリフォルニアを中心に全米で数万人規模の音楽、スポーツ、食品系のイベントでテントやステージ、様々な設備の設営を任されている。しかし、さらなる成長が期待されていたライブ・イベント分野が、COVID-19のパンデミックによりこのひと月ほどで完全に崩壊してしまった。

ライブ・ネーションとAEGは、今年予定していた全てのフェスティバルとコンサートのスケジュールを白紙とし、全てのメジャーなスポーツ・リーグも中止した。彼の抱える200名の従業員達は突然仕事を失い、暫くは人々が公の場で集まるような状況は見込めなくなってしまった。

そんな希望の光が見えない中、コウラの会社が提供出来る特殊なサービスを緊急的に求められている事態を目撃する。病院や地方自治体が、COVID−19患者達を収容する仮設施設を至急必要としていたのだ。

「私は、経済状況の激変、そして従業員達の給与の確保に途方に暮れていました。人生で、この14日間ほど涙を流したことはなかったです」ファウンテン・ヴァリー地方医療センターの外で語るコウラは、来週にはコロナウイルスに感染した患者達が押し寄せ医師達が処置する、トリアージ用の重厚なテントや溢れんばかりの機材を昼夜問わず設営している。

その設備は ー 何万人もの観客を収容するコーチェラで使われているメガテントと変わらない ー それが、現在彼らがロサンジェルスで設営を手掛けている医療ヴィレッジとなる4棟のテントのうちの1棟だ。

残念ながら、この様な特殊な需要は直ぐに終わるだろう。しかし、音楽フェスティバルなどで小さな都市を築くほどのキャパシティーを持つ会社にとって、現在こうしたイベントが開催されてない以上、こうした緊急の仕事がもしかするとビジネスとして生き残るチャンスかもしれない。

こうして、L.Aのいくつかのステージ・イベント制作会社は、たった数日で、ウイルスに対抗する防御の第一線を造る会社へと変貌したのだ。

「我々は敏速な災害救助チームへと驚くほど早く方向転換しました。もし、私にコーチェラの経験がなかったら、この病院には対応出来なかったと思います」とコウラは語る。「私はここに運ばれて来る患者達の姿を見ました。これは現実であり、我々が動かねばならないのです」

コンサートやイベント業界こそ、このCOVID−19の拡大に早くから被害を被った業界の一つだ。レストラン、バーや映画館が閉鎖される何週間も前から、そして自治体が「自粛要請」を始める前から、サウス・バイ・サウスウェストやコーチェラのキャンセルや延期の発表がパンデミックの予兆であった。

事態は、即座に且つ深刻に音楽そしてエンターテイメント業界を直撃した。ビルボードの試算によると、今回のコロナウイルスによってコンサート業界だけで正社員、アルバイトを含めて年間でおおよそ25万人の雇用、そして100億ドルから200億ドル(約1兆円〜2兆円)の損失が見込まれる。AEGやライブネーションといったメジャーなプロモーター達は保険によって幾らかは損失を補填出来るが、そうしたフェスティバルからの収益に頼っていた多くの業者は、数日のうちに廃業に追い込まれることとなった。

「これによって真っ先に打撃を受けたのは、恐らくエンターテイメント業界でしょう。ニュースの記事になる前から、我々の耳には中止の噂は聞こえてました。それからものの1週間で全てが止まり、我々のクルー全員の仕事が無くなりました」と、今年のコーチェラのメインステージの設営を担当するはずだったL.Aの制作会社、ギャラガーステージングの最高責任者であるジョエル・ギャラガーが語った。フェスの中止以来、彼らはベイ・エリアの病院やL.A.近郊5箇所で患者用のテント施設や簡易ベッドの設営などを行なっている。

ニューヨークのジャヴィッツ・センター等、イベント用地が医療現場に使われ、既に医療崩壊が起こり、さらに深刻になるであろう映像が映し出される。ただこうした危機的状況に、こうしたライブ・ミュージック業界こそが普段から早急なペースや予期せぬ事態への対処、必要な即興性に慣れており、奇遇にも参画出来る準備が出来ていたのだ。

「我々の業界は、誰よりも素早く動ける。我々は何もない岩肌に街を造り上げる事が出来る」とギャラガーは言う。「我々は全て用意出来ている。Wi-Fi、無線機、発電機、照明、トイレから洗濯場まで。我々は1日〜2日で小さな街を建てることが出来る、そして今それが求められている」

COVID-19に対応する為に、システム的な危機と共に人工呼吸器等の特殊医療機器も不足しており、人工呼吸器に至ってはカリフォルニアだけで直ちに2万台が必要と言われている。しかし、多くの基本的な建造物は医療センターの建設 ー 昇降可能なフロアリング、空調および換気が出来、何百人もの患者を収容するスペースを作り、さらにはフェイス・シールド等の個々の予防機器の製作なども、イベントやコンサート制作会社なら短い納期でも対応可能だ。

「私たちは、まず何が早急に必要か見渡し、最初の2週間はフェイス・シールド造りを行いました。我々は普段からセットに使う金属パーツを造っているので、基本的になんでも造れるのです」とL.Aとシカゴに拠点を置く制作会社アップステージングの共同創設者であるロビン・ショーは語った。

コロナウイルスが発生していなければ、今頃彼女の会社はポスト・マローンやビリー・アイリッシュ、パールジャムやロジャー・ウォータース、その他の春から夏のアリーナツアー用のセットを組み立ている筈だった。しかし、代わりに今はフェイス・シールドやコロナウイルスに感染した介護施設や刑務所、病院等の標識や間仕切り用の隔壁を製作、輸送を行なっている。

コンサート・ビジネスの予測不能性は、このようなテストに対応出来る値打ちのある準備を証明した。ショーは続けて語った。

「私たちは、『カーブに差し掛かる前に予め修理しておかないとコンサートが開けない』という業界で生きてきた。つまりこうした緊急事態では色々と役に立てるかもしれない」

このトリアージはフェスティバルやコンサートといったビジネスの長期的代替えにはなりません。もしこの感染が長引いた場合、音楽業界にどれほど長期に渡る影響を及ぼすのか、見当をつけるのは難しいでしょう。経済の衰退はチケット購入者たちの購買意欲を奪うかもしれませんし、この10年で爆発的に増加したファン達の「フェスへ行く」という習慣も揺らぐかも知れません。「もうイベントは今までとは同じではなくなるでしょう。9.11以降、空港に行くことが同じではなくなった様に」とコウラは語る。

こうしたコンサート・ベテラン達は、病院や政府からの依頼に対してほとんど経費を賄う程度の報酬で受けていると言う。しかし、こうした仕事でも多くのスタッフや作業員にとっては意味のあるライフラインであり、もしも受けていなければ無職に陥っていたかも知れない。

「私の妻が看護師で、毎日私が帰宅すると彼女の顔には、頑張って出来る限り多くの人を救いたいけど、安全なスペースが足りないという憤りが見えるのです。」コウラ・イヴェントに務める倉庫及び目録管理マネージャーのエリック・マガナ、38歳が語る。「怖いですよ。でも、それがもっと設営しようとやる気にさせてくれるんです。看護師達が危険にさらされない安全なゾーンを作ろうと」

「すごく悪い状況に、良い兆しをもたらしているんです」とコウラは付け加える。「ここにいる14人の作業員は、今頃家でただ座ってるはずだった。この数週間で得た充実感はこの10年の中でも1番ですよ。誰かの命を救っている、その一部を担っていると思えることは何よりも意味がある」

彼らが唯一の問題と語るのが、彼らの技術を正しい人の手に渡すことだ。残念ながらアメリカ政府はCOVIDー19の対応は混沌としており、アメリカの医療システムはN95マスクという基本的な備品を見つけることに四苦八苦している状態のままだ。

コンサート業界のベテラン達は、自分達の許容範囲を伝える事に苦心し、地方自治体の担当者の連絡先を手にいれる為にソーシャル・メディアを使っていた。

「私達はより大きな病院の手助けをしたいが、それをOKと判断してくれる人物に辿り着くまでがとても困難なんです」とショウは語った。

COVID-19の処置に必要な特殊な医療スペースを建てるのは、ミュージック・フェスティバルの楽屋エリアを建てるよりも複雑であるとギャラガーは言う。この新しい分野は、広い視野とガイダンスが無いと時に不明瞭になる。

「間違いなく、勉強が必要な時期はありました。医療実習室がどうあるべきかと言うのを教えてくれて、さらにあわよくば、施工業者に対して直接コミュニケーションを取ってくれる団体がひとつ入っていてくれれば」とギャラガーは語る。「間違いなく我々にとって未知の領域であるが、我々も早く順応することには慣れている」

ライブ・ミュージック業界が長期に渡る、痛ましい一時停止に陥っている今、多くの関連する業界もロックダウンに対し生き残れるのかと恐怖に慄いている。しかしそんな中、アーティスト達がインスタグラム・ライブストリームに舞台を乗り換え、クラブのオーナー達は家賃の支払いに苦悩しながらも、悲しくもテント作りの都市はまだ翌月も多大な需要があるのだ ー それがエンパイア・ポロ・グラウンズ(コーチェラの会場)ではなく病院ではあるが。

「私達は愛しているコンサート・ビジネスに戻れる日が来る事を心から願っています」とショウは言った。「時々、私はベッドで涙する夜があります。しかし、私達の作ったマスクをつけた介護施設にいる高齢の女性から、このマスクのおかげで人々の命を救えるとメッセージをもらったんです。その時、私はそこに座ってこう言いました。『信じられない、このおかげで誰かが死なずに済むだなんて」



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