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スティーブン・キングの小説の中にいるような現実を、スティーブン・キング自身が申し訳なく思っている件

Updated: Apr 13, 2020


4/8/2020

Translated by George Bodman


1978年に発表されたスティーブン・キングの著書『The Stand(邦題:ザ・スタンド)』は、パンデミックにより世界の人口が激減するという内容であった。そして、今回のCOVID-19の感染拡大に対し彼のファン達が、まるでスティーブン・キングのホラーの世界を体験しているようだと口々にしている事を彼は理解している。

「人々が『まるで、スティーブン・キングの世界に生きているみたいだ』と言っている。それに対し、私が唯一言えることは『申し訳ない』しかない。」

「いつ起きてもおかしくなかった」と彼はCOVID-19のパンデミックに対して語った。「日常生活の中で、旅行という行為が重要な役割を果たすコミュニティーにおいて、いずれウイルスが我々に対し強い力を持って語りかけて来る事を、これまで誰も予想していなかった。」

ホラー作家として知られるキングだが、彼が最も興味を持っているのは、一般の人々の日常に「予期せぬ、奇妙な存在の侵入」だと彼は言う。

彼の新たな短編コレクションである『If it Bleeds(原題)』は、超能力を持った探偵ホリー・ギブニーを中心に話が進んでいく。このキャラクターは、HBOのテレビ・ドラマにもなった『The Outsider(原題)』など幾つかの作品に登場する。

「特殊な力を持った人というのは存在する」と主人公についてキングは語る。「私は、報酬さえ手に入れば人々が私をホラー作家と呼ぼうが一向に構わない。ただ、私はそれ以上の事を書いているつもりだし、我々は一体何者なのか、そして我々に何が出来るのかというミステリーに興味がある。」

このパンデミックが、これからの世代にどんな傷跡を残すかについて

「今や70代になった私からすれば、自分の母親が大恐慌の頃の事を話してたのを想い出すよ。あれは傷跡を残した。人々にトラウマを植えつけたんだ。私の孫娘は、今はSkypeで時々友達と話すだけで、友達に会いに行けない。ずっと家に閉じ込められている。。。彼女が(大人になって)自分の子供に『つまんない!外に遊びに行きたい!』と言われたら、きっと『あなたも2020年を経験すれば良かったんだわ!私達は何ヶ月も家に閉じ込められたのよ!私達はバイ菌が恐ろしくて、外に出られなかったんだから!』と言うだろうね。」

書く事で現実逃避をもたらす事について

「1日20時間、私はみんなと同じ世界に生きている。ただ1日4時間だけ、それが変わる。ただ、それがどうやって起こるのか、なぜ起こるのか尋ねられても、私にもわからないとしか答えられない・・・そしてこれを長年続けてきて・・・私が7歳か8歳くらいの時に発見して以来・・・私が初めて日常の世界から離れ、自分だけの世界に入ることが出来たその感覚は、今もその頃とほとんど変わらない。それは、爽快で素晴らしい経験だ。私はとても幸運だと思うよ。」

パンデミックによって、2020年を題材に書く事を変更する事について

「私が当初(今書いている作品の時間設定を)2020年に設定した理由は『出版される頃には、2021年になっていて、過去の話になっている。間違いなく過去の話』だったからなんだ。そしてこの感染が大きくなって、慌ててこれまで書いたコピーを読み直していたら、登場人物のうちの2人がクルーズに出るって話になっていて。。。そこで『ちょっと待てよ、これはまずい。誰もこの年にクルーズになんか行きやしない』ってなったんだ。おかげで、改めて全部読み返して、急いで全ての辻褄が合う様に作品の設定を2019年に設定し直したんだ。」

このパンデミックによって起こる恐怖や不安とどう向き合っているかについて

「この質問に対する手っ取り早い答えは、『私は向き合えていない』だ。私だけでなく、恐らく多くの人々が抱えているこの状況はキャビンフィーバー(閉所性発熱)だ。。。ただ、こう毎日家の中にいると、私に言えることは、私の著書の進行状況は格段に上がり、と言うのも恐怖から逃れる為にこれ以外に出来る事もなければ、これ以上出来ることも無いからだ。私が感じているのは恐怖では無く、恐らく多くの人にとっても『私は外に出るべきではない。もし私が外に出れば、私は何かに感染するか人に伝染してしまうかもしれない』という苦痛を伴う不安なんだと思う。」

世界が恐怖に慄いている中で、ホラー・フィクションが担う役割について

「それは、夢みたいなこと。そうだろ?君は現実じゃないとわかっている世界に入ることが出来る。もし、アーティスト、映画監督や作家、もしくは絵描きがとても優れていたら、その描写があまりに現実の様な気がして、ほんの少しの間だけでも、君はその世界を信じ、中に入り込むことが出来る。それでも、君の意識の何処かには常にこれは現実では無いと理解している。それこそが空想なんだ。」

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